【11.トヨタvsドコモ】恋と口と分身の術

2017年12月16日土曜日

トップリーグ ラグビー

ジャパンラグビートップリーグは第11節
トヨタ自動車 vs NTTドコモの闘いがはじまります。

ここまで7勝3敗のトヨタに対してドコモは4勝6敗という今季の戦績ですが、どちらもこの試合の勝点が今後の順位に大きな影響を与えるので、白熱した良い試合になりそうな予感です。




ドコモ15番フィルヨーンのキックオフで試合開始。
ワンプレー目からいきなりレベルの高い攻防で、キックをおりまぜ、攻守が入れ替わりながらプレーは続く。

えっ、フィルヨーン分身してる?
と思うほどキックのカバーが速いドコモのフルバック。
対するトヨタの10番は185cmの身長を活かした柔らかなキックで、正確に空いているスペースへとボールを運ぶ。プレーが途切れるまでキックオフから2分40秒が経過していた。うん、やはりおもしろくなりそうだ。


トヨタはフィジカル(体格)で勝っている分、練ったアタックでジリジリとゲインし、スペースがあれば容赦なく攻めたて、優位があるうちにキックを使い陣地をとる。まさに隙がない。

ドコモはインパクトのある外国人選手が大暴れ。フェーズを重ねるトヨタとは対照的にビックゲインして一撃でトライを取れる程の破壊力。圧倒的な爆発力は見ていてワクワクするし、ラグビーの醍醐味は激しいコンタクトプレーだと再認識させてくれる。


背番号2番を背負ったトヨタの選手が抜け出す。彦坂ツインズ(双子)の弟である彦坂圭克だ。フッカーとは思えない俊敏な走りでゲインするが、相手の激しいタックルにあいボールを落としてしまう。
それをドコモのフィルヨーンが冷静に処理するが、トヨタもドコモの選手が孤立したところにプレッシャーをかけペナルティを獲得する。なかなかしびれる攻防だ。


だが先制はドコモ。
ドコモ陣ゴール前でトヨタボールのラインアウトというピンチから、相手のミスを見逃さず、一気にビックゲイン。トヨタの15番ジオ・アプロンの好セーブによりトライまでは至らなかったが、敵陣10m付近でのラインアウトを獲得。
きっちりマイボールをキープすると、トヨタのスタンドオフ付近にフォワードの選手が走り込みクラッシュ。そこからスムーズに出たボールは、ドコモの10番パエアミフィポセチにわたり、フィルヨーンとループプレー、ほとんど触れられることなく178cm,108kgの巨体がインゴールの中央にボールを置いた。

特徴のあるヘアースタイル、ゴリゴリの肉体、もし街中で出会ったら逃げだしてしまうかもしれない。いやゼッタイに逃げる


だが、トヨタも負けてはいない。
ドコモのゴール前でラインアウトを獲得すると、モールをつくる。そのままインゴールになだれ込むかと思いきや、ドコモのモールディフェンスに阻まれる。
ハーフから直接ボールを受けたセンターの春山悠太がクラッシュ。

すぐさまハーフがさばいたボールは、
203cm,125kgのジェイソン・ジェイキンスの手中におさまる。
マジでデカい。画面越しでもデカい。
しかも22歳。将来性ハンパねぇ。

今月13日は水曜日だぜ。
ジェインキンスの正面にいたドコモの選手もそう思ったかもしれない。ボールを持ったジェイキンスはそのまま正面にいる選手をものともせずインゴールにすべり込んだ。


その後も一進一退の攻防がくり返される。ドコモは体格の不利を考えればよくディフェンスしているが、なかなかターンオーバーできない。
フィルヨーンは相変わらず分身しており、攻守ともに活躍。たまに3人になってるかもしれない。
一方トヨタはミスがあって得点に結びついてはいないが、余裕は見える。気になるのはややディフェンスの規律が守れていない点か。


17-15トヨタリードで前半は終了。キックの競り合いなどで激しいプレーもあったが、とてもクリーンな試合で見ていて気持ちが良い。


ここで注目したいのはトヨタの小原政佑だ。
183cm,90kgのしなやかな肉体とダイナミックなラン、そして気合の入ったスキンヘッド。マジでイカツイ。だが取り上げたいのはそこではない。足元だ。スパイクがピンク色なのだ。それも淡いピンクではない。鮮やかなショッキングピンクなのだ!なかなかトップリーグでピンク色のスパイクは見ないので、かなり目立つ。これは何か意図があるはず。ピンク色で相手に影響を与えるのか、それとも?

考えてもわからなかったので「ピンク色」でググる。
すると恋愛系の結果がヒットした。


・・・恋?恋してるの!?そのアピールなの!?!?



後半もドコモがPGで先制。
すぐにトヨタもPGで逆転。
リスタートのドコモのキックオフ、トヨタの選手がリフトされてキャッチし、ブラインドサイドにボールを運ぶ。ラインブレイク。トヨタ11番ヘンリージェイミーにボールがわたり、ハンドオフで相手を退けつつゲイン。そこへドコモの10番パエアが追いつく。ヘンリージェイミーをひき倒し、ボールへ腕をからませる。ターンオーバーでナイスプレーかと思われたが、自立できておらず倒れこんだとの判定でドコモのペナルティー。


惜しい。あともう少しだった。ん?
レフリーがペナルティーした地点よりさらにドコモ陣の深いところへ歩いていく。もうほとんどゴール前だ。

パエアがレフリーに呼ばれる。カードがでた。シンビン。
レフリーのジャッジに文句を言ったのだと思う。

わかる。その気持ちはわかる。
僅差で負けていてピンチの場面でナイスプレーをした、自分では正当なプレーだと思っている。倒れる前にとったやん!って感じだろう。だから気持ちはわかる。ただ、見ている側としては

「レフリーに文句言うんかーい!!しかもシンビンくらうんかーい!!
てか何言ったら一発でシンビンなるんか知りたいわーい!!」

である。


シンビンで1人減ったことにより、ここまで均衡していた試合の流れはトヨタへ。
さすがにフィルヨーンが分身してもカバーしきれない。さらにもったいないプレーが続く。ドコモがトヨタ陣内でペナルティのアドバンテージをもらい、フィルヨーンからウイングへのキックパス。トヨタ小原がキャッチしたところに、競りに行ったドコモの選手が小原の首に手をかけて倒した。TMOで協議の結果ハイタックルの判定。得点のチャンスを逃す。


パエアがシンビンから戻った後も流れは変わらず。最後までトヨタペースで試合はすすみ、46-18でノーサイド。惜しい試合だったと思う。



試合後の勝利チームのインタビューを紹介しよう。

イ:インタビュアー
姫:トヨタ姫野和樹キャプテン

イ「4トライ差をつけての勝利となりました、いかがでしょう」

姫「結果としてはすごく満足です。ですが、前半の立ち上がりの部分で、自分たちの甘さが出てしまって、後手に踏むことが多くなったんですけど、そこをしっかり後半で修正して、まあこれだけのトライをとれて、勝利につなげれたってことは収穫かなという風には思います」

イ「具体的には後半どういったところが機能しましたか」

姫「そうですね、ディフェンスの部分は、すごく機能してますね。アタックの部分も修正したんですけど、とりあえずはディフェンスにプライドを持って臨もうということで、で、結果的に後半はトライを許すことなく勝てたってことは本当にすごく収穫だと思います」

イ「さあこれで残り2試合です。プレーオフ進出に向けて意気込みお願いします」

姫「そうですね、トヨタがプレーオフに進むっていうのは、本当に久しぶりのことなので、本当にチームとしてもエキサイトしてますし、このベスト4に向けてチーム一丸となってまた臨んでいきたいという風に思っていますので、引き続きご声援のほど、よろしくお願いします。ありがとうございました」

イ「期待してます、ありがとうございました」

姫「ありがとうございました」


約1分のインタビューだったが、とても23歳のルーキーとは思えないしっかりとした受け答えを見せた。日本代表に選ばれたのもうなずける。




実はドコモがファーストトライを取るきっかけになった、
トヨタボールのラインアウトの場面。

ラインアウトをセットする前に、
トヨタの選手がレフリーとコミュニケーションをとっていた。
ラック周りのプレーに関して、レフリーとの認識を合わせていたのだろう。

その後おそらくレフリーはラック周りに関して注意深くレフリングしたと思う。
トヨタに有利になるようなレフリングをしたという訳ではない。
レフリーが自分で選手に伝えた基準をブラさないように注意深くなったのだ。

レフリーとコミュニケーションをとり、認識を合わせられたかどうか。試合の勝因である。口は使い方によっては、災いの元にもなり、勝利の要因にもなるということが実感できる試合だった。


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